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2/10 復活TIM★CUBA

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2/1 イサックを語る

17586 下北沢ボデギータで 福田カズノブがイサックデルガードを語る マニア向けのイベントです キューバ料理もご注文いただけます ..

隅田川暮色

「隅田川暮色」
芝木好子 著、拝読。

こんなものが文庫復刊してたので
全集を探して読んでみました。

芝木好子というと
洲崎パラダイスに代表される
花柳小説的なものを思い浮かべますが
これは浅草の戦前戦後の
移り変わりを背景にした
中年の女の物語。

戦前は呉服屋の娘だった冴子も
不倫の果てに事実婚となった
夫、悠と内縁関係になって16年。
悠は妻子と戸籍上はそのままだが
冴子は
悠の実家である本郷の組紐の老舗
香月で紐を組んでいる。

昭和三十五年、35歳。

幼馴染の紺屋の俊男も同じ年で
職人の父親とともに藍や紫根を
染めている。

冴子が日陰者の身をそのままに
暮らす場所がどうも現在の
弥生美術館の辺りです。

組紐の老舗は道明を
想像させますね。

隅田川の川べりを歩くうちに
若い時の自分たちに戻って
冴子と俊男は生き直せないかと
考えるようになりますが、それを
貫けば周りが不幸になる。

冴子は難解な組紐に取り組み
乗り越えたことで、自分の
生きる道も定まるような気がしているけれど
俊男との時間を忘れられたわけでもない。

戦後15年の女性としては
新しい女像だったのでしょうか。
そういうことよりも、街の情景が
心象に重なり、影が見えたり
湿度が伝わってくるようなところが
さすが芝木好子。

ただ、組紐、紺屋という今では
街で見かけない商売の人々の物語を
親しいい気持ちで読める人が
どれだけいるのかなと、考えてしまいました。

でも芝木好子の文庫復刊は
意義のあることです。

・・・

「いえ、このままでよろしいんです。
ぬるま湯につかる安穏な幸せは
望まなくなりました。
いつも神経を張り詰めていると、世間や
人の気持ちや、いろんなものが
見えてきて、おもしろいのです。
自分の身勝手の言い訳にもなりますし」

彼女はそう言ったが、これも
身勝手な言い訳そのものかも
しれないと思った。

(中略)

お前、これからどこへゆく、と
父が言っている。
冴子は濃紺に染まる空へ顔を向けて答えない。
生きるってのは、罪深いな。
お前も業の深い女だな、と父が言う。
それはそうにちがいない。
彼女は刻々と暮れる夕暮れから、
川向うの倉庫がくろずむのを見て
欄干から身を離した。

川を忘れないために確と見た、と
思った。

・・・

DJ KAZURU


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