
原田マハが自分で
「無用の人」を映画化するというので
急遽「あなたは、誰かの大切な人」
所収の短編「無用の人」拝読。
スーパーで野菜を並べてるのが仕事の
無口な男、妻にもパッとしない
性格を嘆かれ熟年離婚。
そんな男が
娘の働いている美術館で
現代アートに触れ、確実に
何かを感じ取っている。
そのシーンの描写から
具体的にはマーク・ロスコの
川村記念美術館につい先ごろまで
展示されていた作品だと
推察できるのですが、文庫の
表紙にもなってるこれですね。

50歳になろうという娘が
惹かれている世界を絵を通して
確信したようないい場面でした。
実はこの父親は
岡倉天心の「茶の本」を
ひたすらに愛読してるような
男なのです。
恥ずかしながら未読なのですが
つまりは単なるうだつの上がらない
地味な男ではなく、ひとつの茶に
世界を見るような意識を持っていた
人と思われます。
そんな男が死ぬ直前に
今は現代アートの仕事をする娘に
贈ったのは、窓から桜が
絵画のように見える
彼が若い頃に住んでいた
面影橋のアパートの鍵でした。
何にもない部屋には
「茶の本」が一冊と窓を額とした
まるで桜の絵画。
短い小説ですが
視覚に訴えるなんと美しい物語でしょう。
この美しさをマーク・ロスコの
芸術に触れている
娘に是非とも見せたいという気持で、
アパートの鍵を送ったのか…
映画でどのように
この桜のシーンが描かれるか
楽しみです。
DJ KAZURU
Add A Comment