
マーガレット・アトウッド
「老いぼれを燃やせ」拝読。
表題作は
刺激的な短編。
老人施設で長い日常を
のんびりと余生を過ごしてる
ところへ
若者たちのデモ隊がやってきて
次々に老人が燃やされる話。
老人たちに税金を使われては
若い世代の生活が成り立たない
だから、燃やしてしまおう。
そんな論理はあながち
空想の物語でもないような
今の世の中、ディストピア小説を
得意とするアトウッドの
本領発揮。
老いて眼もろくに見えない
老女は幻影の小人たちと
戯れながら、ある種の
諦めを持って老いた身体と
付き合っている。
食事は用意されているし
何かと自分を構う隣人もいる。
アッパークラスの施設なら
感じの良い世話人もいるし
体が思うように動かないほかは
なんということもない
暮らし。
施設の中には
老いに抵抗して頑張っている
人たちもいて、なんとか
デモ隊の襲撃から逃れようと
試みる。
しかし
火の手が回る中で
老女が最後に見たものは
緋色の衣装でダンスする
小人たち。
翻訳者の鴻巣友季子氏は
これは同じ老人施設の
女性たちが焼かれる描写で
あろうと、あとがきで
ほのめかしています。
「侍女の物語」で
痛烈なディストピア小説を知った
私ですが、こういうものを
読めば読むほど現実世界に
迫りくる闇が感じられますね。
老いてのんびりした人生を
自分がおくれるとは
到底思えないしなあ。
そして
原書では表題作となる
「岩のマットレス」がよかった。
14歳で純情を踏みにじられ
人生を棒にしたかのように思われた娘が
老いて後妻業みたいになってるんだけど
知識と精神力の強さで復讐を果たす物語。
こういう話を恨みつらみではなく
淡々と描写するところがいい。
DJ KAZURU
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