「婦系図」＠国立映画アーカイブ。

先日「藤十郎の恋」を
見に来た際ロビーで
着物を褒めまくってくれた奥様に
また遭遇。

趣味が一緒なのかしら…
もう一度会ったら
友達への道かもですね。

さて、マキノ監督が
泉鏡花の「婦系図」を
原作として撮影した
「婦系図」「続婦系図」とを
編集して2時間弱にしたものを
拝見。

元のそれぞれのフィルムは
消失していて
このバージョンしか
現存してないそうです。

長谷川一夫✕山田五十鈴の
悲恋ものでもあり
早瀬の師匠
酒井と芸者の愛人の物語でもある。

昭和17年の作品ですが
登場人物すべて
明治の空気を出していて、もし
いま「婦系図」を映画にしても
こういうふうに芝居ができる
役者は誰もいないと思われます。

かつての日本の。
もう誰も知らない
日本がここにありました。

教育のない者同士だった
早瀬とお蔦も、今では
お蔦の無学が二人の仲に
ヒビを入れている。

その女の悲しさと
一途さを全身に漂わせる
山田五十鈴。

いっぽう
早瀬の師である酒井は
芸者に産ませた娘を
本妻に育てさせているのですが
その娘と偶然対面した時の
三益愛子演じる
芸者の込み上げる心情が
語られるわけでもないのに
切実に伝わってきました。

優しい立派な良家の娘に
成長している嬉しさと寂しさ。

また、自分の手元で育てていたら
このようにいい娘になったであろうか
やはりこれで良かったのだ、いや
手元で親として成長を
見守りたかった…
という複雑な感情が
無言の芝居の中で非常に
よく描かれてました。

三益愛子の演技力と
風情の賜物でしょうか。

遠い明治の物語ですが
こんなにも胸を掴まれるとは
泉鏡花もマキノ雅弘も
すごいですねえ。

DJ KAZURU