何の予定も無い一日でした。

パンがきれていたので、朝一番で
春日のアトリエ・ド・マヌビッシュに予約の電話を入れ
パン・ド・ミを一本キープ。

天気の良さにつられたのもあったのです。
自転車を走らせて
パンを引き取る前、神楽坂の
アグネス・ホテルに立ち寄ることにしました。

ホテル内のパティスリー
ル・コワン・ヴェールに入ると
赤ワインのムースが目にとまりましたので
すかさずオーダー、テラス席には
他に人も無く、とても暖か。
いつもと変わらず、いえ寧ろ
いつもよりもずっと穏やかでした。
小鳥のオブジェ、木漏れ日、その脇で
なんて長閑なんだろうと、ぼおっと過ごしました。

書店に立ち寄り気になる本をいくつか。
マヌビッシュでは二種のレーズンを使った
パンがアプリコットもプラスしてヴァージョンアップ
してましたので、パン・ド・ミと合わせて
２．５斤を購入しました。

本当に何事も無い一日のはずだったのです。

その数時間後
マンションの９階、たったひとりで
あの揺れと闘った際、もちろん恐怖はあったのですが
何も考えられなかったというのが実際のところ。

僅かの間にバーンとか
ガシャーンとかドカーンとか破壊的な音がたちました。
姿見が倒れ、写真立てが粉々になり
積んであったCDと
書籍が雪崩の如く床に落ちていました。
食器の触れ合う音がすごかったので
ああ全部割れたんだ、と
思いましたが、こちらは無事でした。

絶えることなく余震は続いていたと
思うのです。
サンハンキカンが機能不全になり
船酔いのような感じで緊張の夜を迎えました。
部屋の片づけは放心状態になりながら
やったのだと思います。

テレビは惨事を映し続け、それはとても
正視できない状況。

私は
家族、親族との連絡も
比較的早くに取れました、ガスも電気も
水道も今のところ通常通りに使用できます。
怪我はありません。
こんな恵まれた状況でさえ
「生きていたい」という不安と欲求があります。

(DJ KAZURU)