「群像」掲載
川上未映子嬢の新作
拝読いたしました。
名作「ヘヴン」の流れを感じさせながらも
それを超える充実度。
言葉の鮮明さ、人の心を
浮き彫りにしていく見事さが印象的。
恋愛機能不全とでもいうような
30歳代の主人公の女性は校閲の
仕事をしており、それゆえ
言葉にはデリケート(私も校正のアルバイト
していたことがあるので、チラシを見ても
誤植をあげつらってしまうという感覚は
よくわかります)。
そうした繊細さが人間関係にも
作用しているように読み取れます。
ほかにも女性の登場人物として
バリバリの編集者、平凡な主婦となった
元同級生など、みな人生に倦んだり
苛々したりその描写が思いっきり
リアリズム・・・自分なりの理想の人生を
歩んでいるつもりでも、自分と同じ論理で
そのさまを否定してくる女性もいたりして
このただならぬジタバタ感よ。。。
「しょせん何かからの引用じゃないか、自前の
ものなんて何もないんじゃないのか」
「ひとそろいの実感も手応えもあるから
混乱する」
とんでもなく神経が細くて
生きていきづらいことこの上ない
主人公が唯一、恋心を抱く男性が登場します。
彼が最後に明かした
「嘘」とはなんであったのか明快な答えは出ませんが
「わたしと寝たいと思ったことは、ありますか」
「はい」
の部分かなあと、再読は
そのあたりも
考えながらと致しましょう。
本当に素敵な現代的な小説。
何よりこれは
「恋愛小説」なのです。
(DJ KAZURU)
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