「猫を抱いて象と泳ぐ」
小川洋子著
チェスのルールがわかれば
より楽しく読めるのでしょうが、何の
知識を持たない私も楽しく読めました。
さまざまな事情や障害により
身動き取れない状況に置かれているとしても
チェス盤という小さなスペースが
大きな世界へと導いてくれる。
それは広い海原へ旅立つのと
同じ大きさで
広がっていくのだと
教えてくれます。
もちろん
チェスに限らず。
そこに「世界」を
見つけられたならば
人間はどこまでも深い海に
抱かれることができる。
自由な心を持つのに
チェス盤ひとつぶんのスペースがあれば
もう、それでじゅうぶん。
主人公を取り巻く人々は
実に個性的で、このあたりも
読みどころですが、中でも
少年時代の主人公にチェスの
手ほどきをしてくれる
巨漢のチェスマスター。
彼が手作りしている
お菓子は実に美味しそう!
他にも主人公の祖父である家具職人の
手仕事のあれこれなど
ディテールの丁寧さも味わえる
豊かな小説。
(DJ KAZURU)
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