岩下尚史 著 「芸者論」
拝読。
参りました! の本であります。
芸者、遊女のルーツを
歴史的、学術的に
紐解いたものですが、かつて
こんなにしっかりと系統だてて
芸者という存在を説明できた人が
いたでしょうか。
穏やかな語り口調で
花柳界の用語を説明し、また一般に
はびこる、間違った用法を言い当てて
ちくりと皮肉る岩下氏の
粋な文章がまた見事。
美しい日本語で日本の文化の
重要な側面を書いたのですから
感服するしかありません。
例えば、映画を見ていても
祇園を舞台にした
芸者の話と、関東のそれとの
振る舞いの差はどういうことかと
不思議だったことがあるのですが、それにも
歴史的な意味があったことが
わかりました。
白拍子が出てくる時代劇などでも
単純に踊りも踊れば
枕も共にする存在、と
認識していたのですが、そもそも
「アソビメのアソビとは本来
タマフリ(魂振)およびタマシズメ(鎮魂)のわざのこと」
つまり、健康を保ち活力を維持するに
欠かせない仕業で神々の振る舞いに
つながるということが
詳しく説かれており、目からうろこの
解説書です。
私は溝口健二の「祇園の姉妹」とか
五社英雄の「吉原炎上」とか
廓ものの映画って好きなんですが
どうも、映画や物語になっているのは
女工哀史ならぬ女郎哀史の面ばかりを
強調しているものがおおいようですね。
これからは見方が変わりそう。
(DJ KAZURU)
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