三島由紀夫 著
「女神」拝読。
以前も書きましたが
岩下尚史氏の名研究本
「ヒタメン」に登場する
三島の恋人・貞子嬢の
影響が大きく見られる著作ということで
楽しく読みました。
娘に対して
美を求め、育てていく父親と
その庇護のもと
見事に花開いてゆく
少女の目覚めのものがたり。
例によって
昭和30年ころの
旧華族だなんだのという
上流階級の描写が傑作ですが
主人公の朝子は
「フランス語のメニューがみんな読め」
「その日来ている服の色に合った」
食前酒を選ぶことにもたけている
18才であります。
そもそもこの父親は
美貌の妻に対し、香水のつけ方から
ダンスパーティーでの
身のこなしかた、タバコの吸い方
グラスの持ち方に至るまで
殆ど調教して、外見も内面も
理想の女性に仕立て上げたのですが
空襲で顔にやけどを負って(パリ滞在時代に
買い求めたドレスと香水を取りに戻って
火災に遭ってしまう・・・)以来
その妻はすっかり人が変わってしまい
矛先が娘に向いたわけなのですね。
女の美への執念と
男の残酷な我儘が織り成す
ねじれた家族像といえば
恐ろしい感じがしますが
細やかなディテールで
女性への幻想をここまで書けたのは
ある種、貞子嬢との恋愛が
こんな感じだったから? という
気も致します。
(DJ KAZURU)
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