宮本輝、1977年の
太宰治賞作品「泥の河」拝読。
昭和30年の
まだまだ貧しい、大阪は
堂島川、土佐堀川あたりの
人々の暮らし。
あちこちの岸辺に小さな船をとめ
彷徨うような生活をしていた人も
大勢いたのですね。
精一杯に
生きる市井の人々、また
世の中の不条理にさらされきっていない
子供たちの視線が
匂い立つような力のある文章で
描かれます。
何より、この作品で印象深いのは
戦争体験により
身についた
「生き残った者の死生観」。
映画化した「泥の河」でも
そうした面を容赦なく描いており
素晴らしかった。
田村高廣が、何とも「日本の男」
という土臭さ、そして
廓船で生活する
加賀まりこがびっくりする美しさ。
春をひさいで生計を立てる
加賀まりこ、その幼い子供が
一所懸命に歌う
「ここはお国を何百里」
を
真剣な顔で聞く田村高廣が
忘れられません。
「おっちゃん、こんなに上手に
歌うの初めて聞いた。もっと
歌ってくれ」
みたいなことを少年に言い、その
少年も必死に歌う。
胸が締め付けられるような
ものがたり。
(DJ KAZURU)
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