第147回芥川賞受賞者の
鹿島田真希さんて
私と同じカトリック系女子大の
卒業生なのだな。
津島祐子氏以来、あの大学から
作家は出ていなかったと思いますが
ここへきて遂に!
インタビューを拝読すると
同じ大学で過ごしながら
だいぶ異なる学生生活だったと
思われますが
「大学の中に修道院があって
シスターという存在が
先生にも同級生にもいて」
というくだりが出てきて、私の
学年にも修道服に身を包んで
通学していた人が
いたこと思い出しました。
鹿島田嬢と異なり、信仰をもっていなかったから
「若い身空で修道女とはどういうことか」
と、最初びっくりしたものです。
そして、陰で
マリア様、と綽名をつけていたのだよなー
不謹慎なことに。
さて
受賞作品の「冥途めぐり」。
事前に新聞などで
ネガティヴな評論を幾つか目にして
しまっていたので、過度な期待はなく
読んだのですが、穏やかで淡々とした文章と
淀みないストーリー展開で
好感持てました。
放蕩に身をやつす弟に
夢見る少女のまま年喰ったような
母親との確執、という設定は
まるで
「斜陽」みたいですが、こちらは
低俗臭が最強。
主人公の母親は
女に生まれたからには
美しい自分を保ち
スチュワーデスになって
男に金をできるだけ使わせるのが
最良の生き方だと信じている人(私と
鹿島田嬢の通っていた女子大には
実在したタイプの女性、しかも大勢)で
娘にもその思想を強要。
弟は
キャバクラで金を遣って
居丈高にふるまうのがせいぜいの
小悪党。
実際こんな親族に囲まれていたら
大変でしょうし、状況に逆らいもせず
生きている主人公は「お馬鹿さん」て
ことになるのでしょうが
彼女の生き方は
常にどことない清冽さに満ち
受容するものの美しさがあり
読んでいて不快感がありません。
誰でも持ち続ける
家族関係のきしみを
丁寧に描いてある作品でありました。
*
先に述べた
ネガティヴな評論についてですが
≪舌平目のムニエル≫
のくだりに関して
あんなの今時高級レストランで
出さない、とか
上っ面の上流社会の描写だ、とか
評論している人の文章を
どっかの誌面で読んだのです。
が、
子供のころのリッチライフに
執着する母親に育てられた、
特に社会性のない、食通でもない
主人公の弟が選ぶ
≪高級ホテルの最上階にあるフレンチレストラン≫
であれば
未だに「舌平目のムニエル」ってことも
あるんじゃないかと私は思いました。
「このあと鹿がくるんですよね」
という弟の科白からは
ア・ラ・カルトではなく
おしきせのコースを食べていることがうかがえるし
単純で虚栄心に満ちた人物の
外食の描写としては
ぴったりとも言えるんじゃないかしら。
この弟と母は
「自分たちは一流の人間で
一流の店を知っている。そう
自分たちに言い聞かせる。自分で
自分をだます詐欺師だった」
って結構最初のほうに書いてあるしさ。
(DJ KAZURU)
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