立原正秋 「冬の旅 」 拝読。
16歳から20歳の間に
二度
義兄を刺した罪により
少年院生活を
経験する少年の話。
というと、ロクデナシ系を想像しますが
最初は
義兄に強姦されかけている母を
助けようと揉みあううちに、
もう一度は
義父を刺した義兄と揉みあううちに。。。という
何とも切ない背景。
この少年は
賢く、自分を律することに長けた
落ち着いた精神の持ち主で
優等生タイプ。
当然、周囲の大人たちも
彼が単純な怒りから
犯行に及んだことは信用せず
なんとか助けようと奔走。
ですが母の
美しさを汚さぬために
法廷でもけして義兄のしたことを明かさず
罪をすべてかぶり
それにより
生涯うしろぐらい気持ち抱えるさせることが
義兄への復讐であると考えるなど
なかなか複雑な心境が繰り広げられます。
少年院で過ごしている少年たちの
会話から察せられる
社会の根深い問題や
善良な人間が幸福に人生を
全うできるわけではないという
世の仕組みがいろいろな形で提示され
実に引き込まれました。
「あいつは正義漢じゃないんだ。正義漢なら
まわりから同情をよせられるが、あいつの性格には
こちらが入り込む余地がないんだな。
あいつは倫理そのものだよ」
と、評せられる主人公は
亡き実父の書き残した詩集に感じ入り
「僕は冬は冬の野菜を食べ
夏は夏の野菜をたべる生き方をしたいのです」
と、一般社会での出世などではなく
ごく普遍的な人間らしい生活を求めます。
・・・読後感は重すぎるものでしたが
出会えてよかった一冊。
ところで
この小説には、いわゆる隠語が頻出。
電車賃(はこせん)
子供(ごらん)
喧嘩(ごろ)
逃走(とんこ)
入浴(ざんぶろ)
この調子で次から次へと出てきますが
知らないものばかりで
興味深かった!
・・・
8月25日は 20時半より
イヴェント開催です。
年中ラテン音楽の中に身を置いているので
特に夏向きの音楽とも思いませんが
やはり夏のほうが「気分」ということは
あるかもしれません。
宜しくお集まりくださいませ。
(DJ KAZURU)
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