中上健次の没後２０年で
再びその作品が注目されているようです。

その流れで
ムック本とか出ていると
つい買ってしまう・・・。

主な作品の舞台となった
紀州熊野の新宮は被差別部落であり
「路地」と称されて作品内に登場しますが
これが不思議な空間で
私も相当魅了されました。

複雑な血脈に基づく
家族内、路地内のものがたりは
用いられる言葉の強さもあり
強烈に迫ってくるとでもいうかな。。。

晩年作品の「讃歌」は新宿が舞台ですが

「愛も恋もわからない心のカタワではなかった。
東京に来るまで、愛も恋も
言葉として要らなかっただけだった。元々が
愛と恋の中にいた。
春先から咲き始める夏芙蓉の花の香りが、辺り
一面に漂い、だからそこは
何であれ、誰でも、愛や恋を口にせずに、娘は
若衆に体を許し、男は女に言い寄った。
東京のここでは、愛という言葉が要る」

なんて一節にぐっときてしまう。

最近
新聞にて中上氏が
娘・紀嬢にあてた手紙の現物写真をみたのですが

「人を愛すること
自然に愛すること、その
愛の相手から何も求めないこと、おそらく
どこの親、誰の親でもお父さんの気持ちをわかるだろうし
そのうち紀だって分かる時が必ず来ます
絶対の尊厳、とその愛を言ってもいいでしょう」

などと書いてあり
また好きになってしまいました。

みっともないほど
真っ直ぐで人間臭い。

小説作品もまさにそうで
くだらない細工などかけらもない。
愚直な作風は
今の時代には完全に合わないでしょうが
とても好き。

(DJ KAZURU)