2008
BIS CD636
1. La Permuta
2. Solo Tu Y Yo
3. Salir De Conquista
4. Rosita Y Laura
5. Dale Cuatro Malas
6. La Tentacion
7. La Matricula
8. Tu No Eres
9. Vuelve A Mi
10. Ella Es Culpable
11. Adios Amor
12. Si Tu Sonrisa Se Va
13. A Amarme Decidete
14.Yo Se Que Me Gusta Esa Mujer
クリマックス4年ぶりとなる6作目がついに登場しました。
長い間ティンバを離れジャズよりに大きく重心を移していたヒラルド・ピロートの志向が、
クラーべを重視したサウンドに完全回帰したといえる内容。
近年のキューバンの中でも出色の出来で、初期クリマックスの勢いが戻ってきたようです。
音の傾向を見てみると、1, 2, 4, 8, 10, 11 は明らかに
1980年代から1990年代初頭のコンテンポラリー・ソンをベースにした曲。
モントゥーノの部分から、ベース、シンセ、ホーン、コロが
ティンバ・ジャズ風なアレンジに変化していくところが新しく新鮮です。
1980年代に、キューバのジャズ・ミュージシャンが
NYのサルサ・ロマンティカを演奏したものがティンバ誕生の走りとすれば、
これらの楽曲はティンバ・ミュージシャンがソンを演奏したものといえるでしょう。
2, ではオマーラ、4, ではパブロ・ミラネス、
8, ではハイデー・ミラネス(おそらく初めて歌うサルサ・バンバー)をゲストに起用し、
それぞれのアーティストの個性とクリマックスの独特な質感のサウンドが
見事に融合し素晴らしい楽曲になっています。
5, はトラディショナル・ソンとHIP HOPを並べて、ストレートなティンバのアレンジを加えたもの。
クリマックスの高い演奏能力がいかんなく発揮されたナンバーです。
6, はベネズエラのスーパー・バンドGUACOからボーカルを迎え、
アレンジにはグアコ周辺やTeamVIPで活躍中のキューバ人アレンジャーが参加したナンバー。
グアコは近年、クリマックスに影響を受けていますが、本曲はまさにグアコ+クリマックスの実現です。
13, は本作のハイライト曲のひとつ。
なんとライバル・バンドといえるバンボレオのメイン・ボーカリストのタニアを起用しています。
タニアに歌わせてもバンボレオにはならず、クリマックスになるという自信の表れか、
メロディ、リズム、演奏ともに最高。
ピロートのメロディメーカーとしての才能、アレンジャーとしての力がいかんなく発揮されています。
クリマックス・サウンドは、ピアノ、ベース、コロ、ホーンが、
ポリリズムそのものの中に位置づけられている点に特徴があります。
メロディがあってバックの演奏があるのではなく全てが一体となってリズムを形成しているのです。
そのサウンドは複雑すぎて、踊り辛いということから、キューバ国内では実力のわりに不人気ですが、
もっと高く評価されるべきと感じます。
この作品は、近年ティンバというサウンド・スタイルが画一化されて過去のものとなっている中で、
再び進化をスタートさせた決定的な作品。
クリマックスとしての傑作という位置づけを超え、シーンの中でも高く評価されるべきものでしょう。
ヒラルド・ピロートは、ソンよりの楽曲をティンバ・ジャズで演奏するというアイデアで、
見事にティンバを再生させたのです。
(福田カズノブ★2008/8/14)
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