江戸っ子芸者一代記
中村喜春 という
名妓の半生記。
時代に流されることなく
強靭な意志と、誇りの高さで
生き抜いたあっぱれな女性です。
大正二年生まれなので
彼女が新橋花柳界で活躍したのは
昭和初期、第二次世界大戦が
激しくなるまでです。
いわゆる
芸よし、姿よし、の方であったようですが
彼女は努力して英国式の英語を身に着け
流暢に
英語を喋る芸者であったのです。
そもそも
第一次大戦のあと、外人客が
料亭にも増えたわけですが、お座敷で
流れる音楽や、舞われる踊りについて
解説を英語できちんとできる
日本人はいなかった。もちろん
英語を話す日本人はいましたが
芸者文化を正しく理解し、かつ
英語を話す人がいなかったので
喜春は、発奮したというわけですね。
勉学の甲斐あって、喜春は
日本の政界、財界、歌舞伎役者から
文壇、画壇にまで幅広く
顔がきくようになり
海外からの顧客は
チャプリン、ベーブ・ルース
ヤッシャ・ハイフェッツ、ジャン・コクトー
フィリピン大統領。。。書ききれない程
大物ばかりがついたようです。
その後、外務省の役人と結婚して
海外に渡り、波乱万丈な人生になるのですが
彼女の才覚というものが
すべてのエピソードから感じられ
実に楽しい本でした。
大なり小なり国際社会を
乗り切っていくのに語学力が必要なのは
もっともなのですが、喜春の生き方を見ていると
語学力をはるかに上回る
社交力、会話力こそが
彼女の身を助けたのだと感じられます。
譲れないものがなんであるか
自分ではっきりわかっていること
また
相手の機嫌を損ねない交渉術を知っている
こんな大正生まれの女性がいたのねー
もう最高。
(DJ KAZURU)
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