片桐はいり
「グアテマラの弟」 拝読。
TV 徹子の部屋を見ていたら
「かもめ食堂」の女優さんが弟の話をしていて
これが興味深かった。
幼いころから優秀だった
弟には、何かとコンプレックスがあり
ティーンエイジャーになるころには
口も利かない関係になっていたとか。
しかも
大学院まで進んだ弟は中南米音楽が
好きになり、旅先のグアテマラで
年上、子持ちの現地女性と結婚。
自分は自分で女優の道がひらけたこともあり
それから十余年
ほぼ音信不通の暮らしであったというのです。
面白いのはここからで
弟のことなど忘れて日本で活躍していた
片桐はいりは
「ファクシミリ持ってきて」
なる弟の要望から、グアテマラ行きを決意し
大荷物をかついで乗り込み
すっかり「グアテマラの人」のごとく
現地生活に溶け込んでいる弟との仲を
取戻し、それとともに
異文化の豊かさを享受していく・・・その
顛末が実に面白いのです。
この個性派女優は
語学力ではなく
五感をフル活動させて不便な
グアテマラの家庭の匂いや
土地の風をつかみ取っています。
このエッセイ集においても
食事の風景、独特の宗教
日本では考えられない隣人関係などなど
鮮やかな書きっぷり。
トイレを詰まらせたというような
小さな出来事も、人間の尊厳にかかわるような
大きな価値観の差も
自分の信じる物差しで
さっと見届ける、そして
書く。
なんて気持ちのいい人なんだろう。
ところで
人類で最初にたばこを喫ったのは
古代マヤの人たちだったのだそうだ。大昔
彼らはたばこを宗教の
儀式や呪術的な治療に使った。
火の神の宿る煙を吸い込んで、体の中の
悪魔を焚き出そうというわけだ。
お酒も同じくお祭りに使った。
豊作を祈って大地にふり注ぐ。または
人が口にして幻覚の中で神様に出会う。
この国では
お酒もたばこも、もとをただせば
神様のものだったのである。
(DJ KAZURU)
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