津島佑子著
「ヤマネコ・ドーム」拝読。
新聞書評などでも
絶賛されていて、テーマも
構成もかなり期待して手に取りました。
津島氏の小説は
学生のころに初期作品を読んで以来。
「水死」のイメージが強く残っていましたが
本作品にもそれが濃厚。
昭和20年代、30年代と
いわゆる「米兵と日本女性の」間に生まれた
ハーフの子供たちを中心に据えたものがたり。
その子供たちが成長し、2000年代までを
語ります。
語り手が予期せず変わっていく
スタイルで
そのあたりも新鮮さを感じました。
久しぶりに大声で「これが日本文学なんだよ!」と
言ってまわりたいような、緻密に書かれた
小説であります。
ただテーマは
「ハーフの子」という生きにくさ問題にとどまらず
かなり複雑。
原爆を落とした国の男の子どもとして生まれ
ベトナム戦争にかりだされることであるとか
3.11.後に 再び
放射能という言葉に慄く心の揺れであったりとか
自分の置かれた立場、それにより
何を選んでいかなければならないのか、など
人類の抱える問題が山積みになっています。
さらに、彼らには
幼い少女の事故死(殺人?)が記憶から消えず
ミステリーの要素も。
こんな小説、ちょっとない。
(DJ KAZURU)
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