大門剛明 著
「雪冤」 拝読。
無実の罪を晴らす。せつえん。
世の中には
善人と悪人がいるのではなく
それぞれの人間のうちに
善と悪がひしめきあっているのだと
いうことを考えさせられます。
死刑制度と
冤罪。
これを大きな柱として、ひとつの
殺人事件からくりひろげられる
幾つもの問題提起。
飢餓状況における
泥にまみれたパン。
こんな例を使って、家族を殺されたものが
加害者に死刑を望む心を説明するところが
印象的でした。
汚れたパンなど
食べたら気持ち悪いだけなのに
どうしようもなく腹を減らしているときに
そこにあるから手を伸ばさずにいられない。
なるほど、と思う言葉です。
登場人物は
死刑宣告をうけたエリート学生
苦学して弁護士となった者
家族を殺されたもの
犯罪者の親となってしまったもの
宗教家として人の苦しみに向き合うひと
死刑制度に反対するもの、また
必要だと訴える者・・・・
これら登場人物は
時には被害者になり加害者になり
時をさかのぼって
真実を探そうとして物語を
重厚なものとしていきます。
D坂文庫の推薦文には
「ミステリーを読み解くことを楽しみながら
法律や制度の在り方も課が得てみたくなる」
と、ありますが
描写のうまさも挙げたいところ
大変、読み応えのある文章でした。
舞台となっている
京都の町や京都を走る電車の
描き方も上手くて、目に浮かぶよう。
(DJ KAZURU)
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