初来日公演のさなか東京で行われた公開プレスインタビュー内容
を掲載します。私は一般質問を依頼されていたのですが、
当日は時間が押して主催者側のインタビューのみとなってしまいました。
2人ともとても真剣に音楽について答えていて感動すら覚える内容でした。
どこかで掲載されると思っていたのですが
スペイン語誌のみのようでしたのでここに個人的に公開します。
ですのでこの内容は転載不可とします。
Alexsander Abreu
Q> ティンバとは?
A> 現代のキューバのダンス音楽。
1950年代以前は現地(キューバ)の音楽であったものに
その後いろいろな音楽、ジャズやポップスなど融合してできたもの。
フュージュンされた音楽だが、そのベースはキューバ音楽である。
Q> ティンバとサルサとの違いは?
A> サルサはニューヨークで生まれた。
1950年代のニューヨークやプエルトリコの音楽から生まれた。
サルサは生の音楽で他の音楽とあまりフュージュンされていない。
その根底にはキューバ音楽もある。
Q> レゲトンはキューバでは人気がありティンバは他の国で人気だが
ティンバは今後どうなっていくのか?
A> 昨今はエレクトリック・ミュージックが簡単に作れる。
音楽で大きな大衆を動かすのは難しいがこの音楽
エレクトリック・ミュージックは大きな大衆を動かすことができる。
1990年代、ティンバは人気があったが
当時はエレクトリック・ミュージックは無かった。
音楽はどういうオーディエンスに楽しんでもらうかだ。
今はエレクトリック・ミュージック(レゲトン)と
ティンバの2つに分かれているが、
ティンバを聴き楽しむ人ティンベーロはいるし、キューバでも
その人たちはまた多くなってきている。
今はインターネットで世界中の人がさらに簡単に音楽を楽しめる。
そんな中でティンバには人気を得るポジティヴな力があると思う。
Q> バックミュージシャンから自身のバンドを持った時の気持ちは?
A> トランペッターとして数々の音楽家のバックであったときは、
エネルギーのあるオルケスタはどのようにしているのか、
どのようにオルケスタをまとめているのかを学んでいた。
ポジティヴなことを与えるのがハバナ・デ・プリメーラでの私の役割。
全ての決定はメンバー全員で行う。その方が結束力がつき決定も簡単だ。
バンドの目標はポジティヴなエネルギーをオーディエンスに与えることと
キューバ音楽の復興だ。
今このメンバーでそれを伝えに世界をまわっている。
Q> キューバには非常に多くの素晴らしい歌手がいるのに、
トランペッターであるあなたが歌っているのは一つの矛盾では?
A> ハバナ・デ・プリメーラの音楽は、
ポップス、ジャズ、キューバ音楽の融合だ。
歌の中でポジティヴなものを伝えたいと思っている。
自分はカンタンテというより観客とのコミュニケーターだと思っている。
社会のネガティヴなものを修復する力、ポジティヴなエネルギーを
世界の人に楽しんでもらいたいし、もらえていると思っている。
感想>>ティンバとはなにか?についての解釈を
ミュージシャンから直接聞けたのは最大の収穫。
人気のあったころのアレンジだけがティンバなのではなく、
他の音楽と融合することがティンバなのだとすれば
まだまだ進化する音楽と感じました。
キューバのバンドはリーダーが
音楽も売上も全てワンマンに決定しているのが普通なのに対し、
彼のバンドは自分の経験からメンバー主義にしているところが
このバンドのかくれた特徴のようでした。
クバトンは大会場では音量で勝負できるようなので
演奏主体のティンバは苦戦しているのでしょう。
彼がキューバ音楽の復興を目標にしているのも
逆にキューバの現状をあらわしています。
Eddy K
Q> 昨今のレゲトン、クバトンブームをどう思うか?
A> クバトンは、キューバ人が自分たちのアイデンティティを
確かめるためにレゲトンをクバトンと変えて新しく名付けたもの。
プエルトリコのレゲトンはアメリカの音楽とレゲエが融合したものだが、
キューバのレゲトンはティンバに影響を受けている。
レゲトンにもそれぞれの国の味わいがある。
私はクバトンをアーバン・ミュージックと呼んでいる。
広い意味でいろいろな音楽に影響を受けているからだ。
Q> ティンバとクバトンは友達か敵か?
A> もちろん敵対していない。
キューバでも海外でも一緒に演奏する友達である。
全てのジャンルの音楽にスペースがあり観客がいると思う。
音楽には名前が付いているが良い音楽をやっていれば人気は出る。
売れていない他のティンバ・バンドは
ハバナ・デ・プリメーラを見習うべき。
Q> レゲトン、クバトンと呼ばれる音楽は将来どうなっていくのか?
A> 今は非常に多くのグループがクバトンをやりたがっている。
ただ今のクバトンはもう一つ上のステップに行くべきと感じている。
それにはもう少し時間がいる。
若者の音楽なのでもう一つ上のレベルの音楽にもっていくのに
やらなければならないことがたくさんある。
音楽は皆で共有して楽しむ時と、個人で楽しむ時とがある。
ライブやクラブがあり、ダンスしたり、歌ったり、聴いたりと
楽しみ方もいろいろだ。
初めてクバトンのライブを見る人も多いと思う。楽しんでもらいたい。
感想>>彼は、アレキサンデル・アブレウを尊敬しているようでした。
またクバトンは人気先行で音楽的にはまだまだと自覚しているようでした。
ただクラブやライブでは受けている実績があるようで、
演奏する音楽ティンバとは異なるオーディエンスが確実にいて、
それをつかんでいるという自信をもっているようでした。
(福田カズノブ)
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