昨年
読んだ本の中で
No.1 と感じたのは
村田喜代子氏の
「ゆうじょこう」でしたが
初めて読んだ作家の中で
ダントツに衝撃的だったのが
皆川博子氏の短編集
「少女外道」でした。
どう良かったのか
伝えるのに
戸惑うほど要素が沢山あるのですが
まずは
「カテゴライズできない」のが魅力。
昭和五年生まれの著者が
70歳代に書いたとは思えない
瑞々しさに圧倒されました。
おさめられた作品は
少女の時代と
戦争体験を濃くからめたものが
多いのですが、戦記物というわけではなく
少女小説でもない。
ミステリーの部分、恋愛の部分
短い行数の中に
込められたものが
丁寧に書き表されております。
表題作「少女外道」は
戦前
小学校にあがったばかりの少女が
自宅の庭の手入れに来ている
庭師たちの作業を
縁側から眺めている光景の
回想から始まります。
庭師の動き
刃物の手入れの描写からスタートする
作品、この
「少女時代に庭を眺めていた」だけの
エピソードが皆川氏の手にかかると
どうしようもなく
エロスに溢れているように感じられ
それだけで困惑。
あ、この人
皮膚感覚で書いている。
そのように感じぞくぞくしたものです。
少女はやがて
「血と傷を偏愛する自分」
の感覚を
「決して他人に知られてはならない」
と
歪みを
自覚してゆくのですが
それらの描写も蠱惑的。
そして
「狂うことが死より恐ろしく
普通に
生きようとつとめた」
少女は
長い年月を経て
老いてかつての暮らしを回想する・・・徹頭徹尾
むせんで倒れるかと思うほどの
濃密な薫りに包まれた小説。
鮮やかに時を超える
場面展開や
登場人物に与えられる美しい名前など
テクニックの高さもまた素晴らしく
大切な一冊となりました。
(DJ KAZURU)
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