2006
ahi-1050
1. Mi Bailarina
2. Puro Y Temba
3. Las Cubanas, qué lindas son
4. La Mentirosa
5. Taca Toco
6. Señorita Pajarita
7. No Mereces La Pena
8. Directamente Al Mambo
9. Baila Conmigo
10. Yo Con Mi Jolongo
11. Ave Maria Por Dios
ビル・ウォルファーという人は本当に
センスのある人です。
キューバの音楽や音楽家の技術に
興味を示す「外国の音楽家」というのも
珍しい存在ではなくなりましたが
彼ほどに、音楽家として現地のミュージシャンと
きちんと交流できた人は、何人もいないのでは
ないでしょうか。
キューバの音楽家とて、レコーディングしたいと
乞われれば、どの国の人間が相手であろうと
その技術の貸し出しをしてくれるわけですが
ビルは
けしてキューバの音楽家に劣らない存在として
彼らと対峙しています。
だから、彼らも
これだけのものを惜しみなく出せたのだと
考えられます。
ここには「自分達の国の音楽を
リスペクトしてくれ愛情を示してくれた
外国人へのプレゼント」とは桁違いのものが
確かに録音されているのです。
ビルは80年代にはマイケル・ジャクソンの
ツアー、もしくはレコーディングの現場で活躍していた
人物ということで、そのキャリアの素晴らしさは
誰もが理解できるところですが
Mamborama のプロジェクトにおける
ミュージシャンの選択能力、プロデュース能力、
作曲能力と、これだけ揃ってしまうと
知性の面でも、かなり明晰な人なのだろうと思われます。
音楽的には伝統音楽のソンを
おおいに基調としていますので、耳障りは
意外にもソフトです。
しかし、実際のアレンジや演奏は高度ですし
洗練された印象に仕上がっています。
ユニット名はマンボラマですが
いわゆるマンボはまったく演奏してませんので
キューバ音楽が好きな層にもう少し
アピールした名前を掲げた方が
良かったのでは? と思うほどキューバ音楽の
ツボをついた作りです。
参加したキューバのミュージシャンは
NGラ・バンダのトスコをはじめ、トニー・カラ、
エル・ネネやロス・バン・バンのロベルトン
近年注目のCUBANITO20.02と
トップの面子。
彼らを集めただけでもすごいと思いがちですが
すごいのは、彼らにしっかりと音の方向性を
伝え、具現化させてしまったという部分です。
すでにキャリア充分な面々とはいえ
ビルのおかげで新たな自分の特性を
発見できた人も
なかにはいるのではないでしょうか。
ビル自身もピアノで参加していますが
この攻防ぶりもかなり白熱している様子を
呈しており、聴き所です。
マノリート・シモネイらに、ピアノを師事したことも
あったようですが、ビルのピアノは驚くような美しさ。
様々なテクニックを駆使しながら、キューバの
うねりをしっかりと捉えていく。
これを、細やかな音が際立つような
クリアな録音で堪能できるのですから
これ以上望むべくものは何もありません。
ちょっとキューバへ出かけて
「現地で人気の音楽家とレコーディングしてくる」
「自分の創作活動の参考にしたいから
音のサンプリングをしてくる」
そんな簡単なこととは違うのです。
この作品が示したビル・ウォルファーの音楽家としての
偉大さに拍手です。
(DJ KAZURU ★ 2006/09/11)
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