有吉佐和子著
「芝桜」 拝読。
大正期から昭和初期の
ふたりの芸者を中心に描いた
東京 花柳界のものがたり。
当時の風俗が
細やかに描かれていて
それだけでも楽しい。
主人公の正子は
器量も芸もよし、の芸者。
金回りのいい旦那もついて
恵まれていますが
歌舞伎役者と恋仲になり
芸者で得た金を
貢状態が何年もつづきます。
正子と年も近い蔦代は
対照的に
金のためなら「不見転」(みずてん
といって、枕芸者のこと)もいとわず
学はなくとも
世渡りの才覚で
成功していきます。
踊りの稽古に熱心な
正子よりも、人の心を鋭く読み
巧みに人心を操って
自分の地位を確実にしていく
蔦代の手練手管が
おそろしい・・・
前半のハイライトは
蔦代の策略で歌舞伎役者への
積年の思いがさーっと冷めていく
正子の心情の変化ですが
人って
どんなに思いつめた恋でも
自尊心までは台無しにできないことが
あるのだよなあ、と
しみじみする一幕でした。
現実にも
水商売の世界で闘えるのは
蔦代のような
たくましい女。
そう考えると
素人玄人の境が見えずらい
現代社会でも
「カタギさん」がやすやすと
入り込んでいい世界では
ないのだよね。
自分をかえりみても
人の心を操作して、つけこんで
利を得る、みたいな芸当は
とても出来そうにないので
蔦代のような人に
近づかれないように
願うばかりです
くわばら、くわばら。
(DJ KAZURU)
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