「おそめ」
石井妙子 著
拝読。
「夜の蝶」ってすでに
古い言葉かも? ですが
銀座のホステスさんを
そのように称した小説が
ヒットして
水商売の女性の生き方が
注目された時代が
昭和40年代だったみたい。
現実にも
その世界の中心にいたのが
伝説のバー
「おそめ」の女主人
上羽秀さんで、その人生に
せまったのがこの本。
作者は
毎日新聞囲碁欄担当の
女性ということですが
経歴を見ると
わたくしの大学の先輩にあたります。
こんな人いたんだ・・・
上羽秀さんは
新橋で芸者の修行をしながら
なぜか京都でデビューした
芸妓出身という
変わった経歴。
京都と東京では
踊りから言葉から
何から何まで違うわけだからね。
芸妓として人気が出る→
旦那に家を持たせてもらう→
情人ができる→
バー「おそめ」を経営する→
店の規模を広げる・・・
というコースで大成功しますが
銀座に「おそめ」の支店を
出して、飛行機で通ったことから
「空飛ぶマダム」の異名で
週刊誌のネタにしょうっちゅう
なっていた人みたい。
親の代からの
お金の苦労もたいていではないですが
40歳くらいまで、秀の愛人として
世話になりっぱなしだった男が
実はほかの女性と結婚していて
その女性との間に生まれた子供たちの
生活の面倒まで秀に
みさせていたというのには
びっくりしました。
そんなことに
耐えられる女性がいるのだなあ。
その愛人はなぜか
40歳代になって映画プロデューサーとして
大成功、本妻の間にもうけた娘は
女優になって大成功、これが
藤純子のことときいて、はー
なるほど、でしたが
彼は
それまでのヒモ生活など
微塵も感じさせないくらい
映画界では有名な人です。
他にも
有名作家(当時の銀座や
京都のクラブの主たる客層)との
交流の深さや
同業ママさんたちとの
確執、など
エピソードに事欠かない
秀の人生、とーっても
興味深く読みました。
意外にも男性関係は
すっきりしていることが
上羽秀という人の
一途さを表している気もします。
2012年に亡くなられているようですが
まさに伝説、の人生。
くだんの愛人と入籍したのは
70歳代になってからだったというから
なにからなにまで
破格。
作者は
「おそめ」以降に文壇バーはない。
器の小さい作家もどきが
集まって出版社の金で
汚く飲んでいるだけの店があるだけ、と
いうようなことも書いていますが
時代的にも
大物文士が夜の盛り場を
にぎわせていた
いい時代だったのかなと思います。
(DJ KAZURU)
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