日本文学を
10年ごとの時代で区切って
紹介していく
新潮社
アンソロジーの5巻目。
この中に収められた
三島由紀夫の
短篇のタイトルが
「百万円煎餅」ですが
これ見ただけで
読みたくなるよね。
ほかにも
先日亡くなった
河野多恵子氏の
「幼児狩り」、
森茉莉氏の
「贅沢貧乏」
吉行淳之介氏
「寝台の舟」などなど・・・
このアンソロジーシリーズは
どれもそうなのですが
こんな小説をこの作家が
書いていたのか! と
驚くようなレアものも
結構収録されていて
選者のセンスが光ります。
河野多恵子氏の訃報を
伝える新聞では
どれも「幼児狩り」を
代表作としているのに
わたくしは初めて読みました。
そして
ガーン、とやられました。
性的な嗜好って、秘められた
関係の中で行われるならば
どのようなものでOK、だからこそ
小説において
他所の世界のもの、でありつつも
しみじみとその味を感じさせるのは
難しいとおもっているのですが
これはとてつもなく
迫ってくるものがありました。
河野氏は、芥川賞選考委員を
つとめていたとき
金原ひとみの「蛇にピアス」を
「なんとしても、受賞させたい」
と
たいへんに推したということですが
よくわかります。
初めてふれた
作家さんの中では
柴木好子氏の
「洲崎パラダイス」が印象的。
花柳小説と
きっと当時は言われていたと
思うのですが
水商売の女性の
たくましい生き様と
男に対する
ハナから失望しつつも
添いたい気持ち、みたいなものが
湿度高い情景の中で
描かれていました。
「あ、いやだ、いやんなる」
彼女はくさくさすると、もう
考えまいと首を振った。
考えることは苦手だった。
二人で築こうとした新家庭も
わずかの使い込みで
善治が会社を首になってから
ずるずると崩れてしまった。
善治の不甲斐なさが
蔦枝にはくやしくてならない。
男というものは
たとえ悪を働いても
女を
支配するものでなければならないと思う。
そのくせ
善治が哀れでもあった。
彼には気の利いた
悪さえできないのだ。
(DJ KAZURU)
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