Jugando con Candela 018
Adalberto Álvarez y su Son
1999 ATLANTIC 83184-2
1.Una Mulata En La Habana
2.Estás Como Villegas
3.A Bailar El Toca Toca
4.No Llores Más Por El
5.Si No Vas A Cocinar Tunturuntun
6.Y No Me Dá La Cuenta
7.Verdaderos Soneros
8.Te Equivocaste
9.Mientes
10.Conócela Bien Primero
11.Solamante Tú

2005年現在のキューバ音楽は多様で、ジャズやクラシックから、ポピュラーなサルサ、ティンバ、そしてヌエバ・トローバ、最近流行のポップス、ロック、ヒップ・ホップ、レゲトン、民衆音楽としてのルンバ、宗教音楽としてのサンテリアまで様々なジャンルが混合する形で存在していますが、中でも、最もキューバらしい、伝統的なポピュラーな音楽は「ソン」だといえます。

初めて、その「ソン」を聴きたいという人がいるならば、私はAdalberto Álvarez y su Sonの1999年の作品「Jugando con Candela」を入門編として推薦します。

Adalberto Álvarezは、1977年にSantiago de CubaでSON14(ソン・カトルセ)を結成し、1979年に名作「A Bayamo En Coche」(BARBARO B237)でデビュー。6年間で3作を残して、リーダーの彼はSON14を残して1983年にハバナに進出し、Adalberto Álvarez y su Sonを立ち上げます。
1980年代後半には、トレスの名手Pancho Amat、カンタンテには名ソネーロFélix Valoy、ティンバレスにはCalixto Oviedoを擁して、キューバ最高の演奏力、アンサンブルを持つオルケスタになります。
その頃、Adalberto Álvarezの書く楽曲は、他国のミュージシャンにリスペクトされ、La Sonora Ponceña、Oscar D León、Willie Rosarioなど大物にも数多く取り上げられ、名作曲家としてキューバを代表する存在になります。

1990年代になると、サルサ・ティンバがポピュラー・ミュージックとして全盛になり、1980年代を代表するソンの名バンドであるConjunt RumbavanaやRoberto Faz y su Conjuntoが次々と消えていく中で、Adalberto Álvarezは、キューバ以外の汎カリブのリズムをも取り入れ、カンタンテにパウロ、バレンティン、ロヒータスといった若手を登用し、若干勢いが下降気味であったとはいえ、第一線の地位をキープし続けます。

そのようにマイペースともいえるスタンスを貫いていたアダルベルトが、1999年に発表した作品が、Adalberto Álvarez y su Son 通算16作目となるこの「Jugando con Candela」。
プロデュースに、OPUS13出身のJoaquin Betancourtを迎えたのが功を奏し、オーソドックスなソンを感じさせながらも、シャープで伸びやかな演奏と美しいメロディが全曲を貫き、1980年代の勢いを取り戻した内容となりました。
ティンバ全盛期に、ブエナ・ビスタとは違う現在進行形の「ソン」が生き生きと蘇ったこの作品はキューバ国内でも大ヒットし、特に一曲目の1.Una Mulata En La Habanaはコンサートで観衆が大合唱するまでのヒット曲となりました。まさに、Adalberto Álvarezここにあり。本アルバムは、彼の健在ぶりを示したという意味でも10年に1度の傑作です。

各楽曲をみてみますと、先にも述べたように1.Una Mulata En La HabanaはAdalberto Álvarezの書いた数々の名曲の中でもベスト10に入る傑作。2.Estás Como Villegasも、カンタンテのAramis Galindoの伸びやかな歌唱の光るナンバーで、ダンスには最適です。4.No Llores Más Por Elはしっとりとしたボレロ調のソン。この曲が好きな人は1980年代のソンがはまる人でしょう。10.Conócela Bien Primero、11.Solamante Túと軽快なソンが続き、全曲駄作無しのアルバムとなっています。

2000年には待望の初来日を果たし、古くからのファンを感激させましたが、全盛期の演奏には少し及ばないところがあったようです。
ソンの継承者をManolito Simonetに譲った感のある昨今、Adalberto Álvarezの才能にはまだまだ埋蔵量があるので、彼のファンを自認する者としては、今後も流行に左右されることのない重量感のある作品を期待してしまいます。

(福田 カズノブ ★ 2005/04/04)

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