Electric Lady 031
NORA NORA
1996 BMG
1. Loco Por Mi
2. ¿ Cómo Será ?
3. De Ti Nada Más
4. ¿ A Dónde Irás ?
5. Me Enamoré De Ti
6. Contestame
7. No Me Pidas
8. Quererte A Ti
9. Nora Sola
10. Me Enamoré De Ti 〜愛してるから


2005年現在NORAは
生まれ変わったオルケスタ・デ・ラ・ルスの活動において
日本語と「サルサ」をいかにブレンドしていくかに熱を入れています。

バンドの一員として活動中の彼女の心持は
かつての「オルケスタ・デ・ラ・ルス」を経て、ソロ・アルバムを
製作したときと異なる状態なのだろうと、察するのですが、
本作品も間違いなく、NORAの歴史の一部分。
彼女がかつて、日本人オルケスタとして世界に飛び出し
栄光を手にした後に、ソロの可能性を求めて録音した
この作品を、一度は聴いてもらいたいと思うのです。

旧デ・ラ・ルス時代に親交を持っていた
名プロデューサー。よくも悪くも個性的な才能を持ち合わせた
セルジオ・ジョージに、すべてを委ねて作られたゆえに
賛否も、好みも大きく分かれるのでしょうが
ここにいるのは、ナチュラルなNORAではなく
別のアーティスト「NORANORA」。その前提で聴くことがベスト。

セルジオは
NORAに声の出し方、表現の微細に至るまで
注文を突きつけたといいます。

♯2はGUACOの名曲を
当時、最高に人気を誇ったセルジオの秘蔵っ子
ヒューイ・ダンバーと共にカヴァーした曲ですが
NORAと同じくらいの高音域を出す彼とのデュエットは
非常に苦労したそうです。
どれだけ精一杯に歌っても
「もっと。もっとだ」と、許しては貰えず
血管が切れそうになるほどの歌い方を求められ、しかも
聴き手にはアドリブに思えるような、掛け合い部分も全てが
セルジオの注文どおりに、表現しなくてはいけなかったと。

窮屈だったかもしれません。
もしかしたら彼女は、このようなやり方で、ソロ・アルバムを
作ろうと考えてはいなかったのかも分かりません。
けれど、その結果として存在しているこの作品を聴いてください。
日本人のラテン歌手で誰がこのような完成度の
作品を残せたでしょうか。
紛れもなく素晴らしい歌手NORAが、豊かな音楽を持ち合わせた
プロデューサーと出合ったからこそ、です。

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日本を代表する女優のひとり、岩下志麻は
若き頃「映画は主演女優のもの」と自負し
出演する作品には、当然のごとく全身全霊で取り組み
自分なりのアイディアがわけば、監督に
「ここは、このように動いた方がいいのではないか」
「セリフはこちらのほうが自然では」
などと、進んで意見を述べることがあったのだそうです。

しかし、ある時、監督に
「君は私の指示通りに演じてくれればいい
映画は監督のものだ」と言われ、憤慨した。
憤慨はしても女優ですから、「じゃあやってやる」となり
監督の望むとおりに意地になって演じたそうです。
そして、作品はできあがりラッシュを見るときになって
「素晴らしい出来になっている。やはり
映画は監督のものだった」と
岩下志麻は揺らぎもなく思ったそうです。
・・・以来、彼女は女優として
ますます評価を高くしていったといいます。

女優も、歌手も、どうしようもなく表現者ですから
「映画は監督のもの」、「音楽はプロデューサーのもの」
ということになったら、相当抵抗があるのは当然です。正確には
どちらも、その女優や歌手なしには、成立しない世界なのですから。
が、監督に全て身を任せることにより
「自分でも想像のつかないない世界」にたどり着けるということも
あるのだと思うのです。

なお、♯5は実に切なく美しい曲ですが、NORA自身が
作曲しています。この美メロを生み出せるとは
彼女の才能、歌手だけにとどまるものではないということでしょう。

(DJ KAZURU ★ 2005/07/04)

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